Thorensを知る ~導入を検討している方に~

Thorens td-150 mark 2

2023年10月16日 10時08分

 ターンテーブルは長らくYAMAHAのGT-1000を使ってきましたが、こちらに引っ越してきてからインテリアに馴染むにはデカすぎました。以前からその重さとデカさには妥協という形で使ってきましたので、ダウンサイズを図ってひとつ下のモデル、GT-750を導入しました。確かに少し軽くはなりましたが、そのデカさはほとんど変わらずと言ったところでしょうか。

 

 写真で見てみるとそこまでの圧迫感はありませんが、なんせ上のテーブル自体が杉の無垢材で軽めの木材、更にL字で支えているだけなので確実に負荷は掛かっているはずです。とはいえNS-1000Mという同ブランドの同質のブラックカラーは見た目もしっくりきます。またその音質もしかりです。王道のモニターである1000Mの正確で締まった音に、全く同系統のGTシリーズはぴったりです。

 音像が更にはっきりくっきりなるようにと導入したSAECのSS-300という超合金のターンテーブルシートも上に乗せておりましたが、これが1枚で3万円以上もするので普通の人にすればほとんど「オカルト」です。確かにそこには違いはありますがその差は非常に細かいもので、それを気にするか否かは個人の問題と言ったところでしょうか。

 さて、そろそろこのデッカイターンテーブルを「卒業」して、さらに洗練されたモデルはないものかと、以前から気になっていたこちらをようやく導入しました。

 Thorens TD-150 mark II です。 ご覧の通りそのサイズ感はGT-750の半分と言っても過言ではありません。その重さも本体はたった3kg程度。テーブル自体(上に乗っかっている円形の鉄板)が同じほどの重さがあってトータル7kg弱です。只今現在もターンテーブルの最高峰と言われ、500万円というトンデモナイお値段のLINNのKlimax LP12はこのTD-150から由来します。見かけもそっくりですし、フローティングシステムという構造もそのままです。「フローティング(floating)」=浮く、「システム(system)」=構造。指でつっつくと針の部分と盤の部分がフワフワと浮いた状態にバランスがとられているので、外部からの振動を受け流します。

 今までのターンテーブルは当然、コンセントにプラグを差し込めばそのまま使用できましたがそうはいきません。ドイツ製ですから220Vの入力でないと動きません。さらに対応周波数も50Hzですので西日本の60Hzのまま差し込めば、電圧は同じにしても回転数が速くなったりノイズが入ります。日本国内の家電は今は全て50Hz、60Hz共に対応していますが、当然このド古い代物はそんな機能はございません。

 つまり導入したはいいものの、実際に聴けるようになるまでには今回、以下の2点をクリアしなきゃなのです。

日本のコンセントから拾える電気の電圧100Vを220Vまで上げてあげる
⇒ 「ステップアップトランス」という変圧器を用意する必要がある。

・西日本のコンセントから拾える電気の周波数60Hzを50Hzに換えてあげる 
⇒ これが中々今は面倒です。というもの上記に述べたように、今ではすべての家電が両方の周波数に対応しているので、そもそも周波数を変換する機械の存在意義がなくなってしまったのです。市場が求めていないものを作るはずもなく、今ではネット上でも簡単に見つかりません。それでもなんとかして見つけてきたのがこちら。

 CSEのアイソレーションレギュレーター「R-100」。その隣にあります小さいのが変圧器です。アイソレーション(isolation)というのは「孤立」とか「断絶」という意味でして、電気もひとまずここに入れてコンセントより前の地点から「断絶」するわけですね。そしてレギュレーターはレギュレイト(regulate)する、つまり中に入れて断絶された電気をキレイに均等に整えるわけです。これによって家の不安定な電気供給を一定に保ちます。そして更に入ってくる電気の周波数は50であろうが60であろうが良くて、更に更に、出すときに50でも60でもスイッチ一つで切り替えることが出来るのです。これ一台で供給電気を安定させてアンプ自体にノイズを発生させないことに加えて、周波数も自在に換えられるのでまさに一石二鳥です。

 このR-100から出てきた整えられた50Hzの電気を、次は220Vまで持ち上げてあげる為にこの青色のトランスを使います。

 ご覧の通り、「100V」と「220V」という表記があります。上にさしてあるコンセントは、両端がコンセントのオスになっていますので、こちらが電気の入ってくる方です。下のグレーのケーブルがトーレンスにつながっているコードです。つまり上から下に向かって電圧を100Vから220Vに上げていることが分かります。またこの変圧器の便利なところは、逆に差し込めばステップダウントランスとして、つまり電圧を220Vから110Vに下げることもできるのです。

 因みにこのトランスは100Wまで対応しているのですが、トーレンスのターンテーブル自体がなんとたった4Wの消費です。そりゃそうですね、ただクルクルと鉄板を回すだけですのでドライヤーみたいに1000Wを超えるような電気を使いません。このモデルは日章工業株式会社さんのもので、いろんなワット数のアップダウントランスがあります。値段もそんなに高くありません。鉄の塊、という感じです。

 今回CSEのアイソレーションレギュレーターは、周波数を換える為に購入したにもかかわらず、出力が2つあるのでDENONのプリメインアンプにも使用できることが判明して、大きくその音質を向上することが出来ました。こういう不意の発見があるから面白いのです。

 そうしてようやくまともに試聴に至り、途端にその違いを感じました。比較対象がYAMAHAなので余計にかもしれませんが、キレイに整っていて平坦な音から、いい意味で無骨で生々しくなりました。ツルツルという擬音から、ゴリゴリという擬音に変わった感じでしょうか。個人的に生活面ではツルツルの方がいいですが、音に関してはこのゴリゴリ感、いいですね~。YAMAHAのGTはかなりデジタルっぽかった、つまりいい意味で音をキレイに整えていたんだな、そう気付かせてくれるという感じでしょうか。

 どの盤のどの部分がなんて言い出すと一般性も無くなって、マニアックな話になるので一切しませんが、全般的に言うと「このプレーヤーにわざわざ乗せてこの固有の音で聴いてみたいな」そう思わせてくれます。見た目も可愛いくコンパクト、その中に渋さとシンプル性、要らないものは一切そぎ落とした洗練されたモデル。半世紀以上前に作られ、今という時代にでさえ尚、こんなにもいい音を再生してくれているその事実自体が聴く音楽に刹那性と深い味わいを付け加えてくれます。

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